今回の構造計算偽造問題、住宅のコストを下げる中での下請け、孫請け問題。機関がチェックできなかった(=何もいえなかった)ということ、そして民間指定確認検査機関の思わぬ落とし穴でした。
とある自治体の建築部門に知人が居ます。以前話を聴いたときこんな話をしていました。現在、自治体の建築指導課など特定行政庁が行う確認申請は激減しているということ。数年前の3分の1にまで減っているそうです。したがって確認申請の手数料収入も減り、予算も人員も削られた。しかし、民間確認検査機関が確認を下ろしてしまった書類は、法律上、自治体が発行してしまったことになるから、チェックしなければならないし、自治体が責任を持って書類を永久に管理・保管しなければならない。このための仕事が激増しているとのことでした。しかし、これに対して民間確認機関から自治体に払う手数料は無い。こんな状況はおかしいから、何とか指定確認検査機関から審査手数料制度を作れないか考えていると話していました。図らずも今回の事件から、彼の努力よりも先に制度自体見直しになるかもしれないですね。直接関係無い話ですが、これだけマンション建設が盛んであって、自治体へ出る件数が減っているというのは推して知るべしかなと思います。
また、なぜ建築確認は民間がいいのか?と聴いてみたところ、それは「スルー」だからだろうといっていました。奇しくも今回のケースが浮き彫りになったかたちです。しかも、今年の6月に最高裁の決定で、指定確認検査機関が確認を下ろした物件の確認取り消しを求めた訴訟で、係争中に工事が完了して、民間確認検査機関が完了済証を発行してしまったので、その場所の地方自治体に損害賠償を請求することに変更できる出来るという判断をしました。国でもなく、国(国土交通省)が指定した民間確認検査機関でもなく、地方自治体に責任がある、端的に言えば民間確認検査機関は「仕事は出来るけど、責任はなし」ということになるのでしょうか、解せないけれども、それが最高裁判所の判断です。(平成17年6月24日 第二小法廷決定)
今回のケースも、建築主も、設計監理者も、施工業者も、確認検査機関も責任を負わないという最悪の場合は、マンションが建っている自治体が損害賠償を請求される恐れもあるということになります、その賠償金はコストを浮かした利益からでなく、家を失った人も払っている税金から払われるのは不可解ですね。
しかし相変わらずメディアは、表層しか見て無いですね、問題の建築士と検査機関と行政が悪い・何とかしなさい!系の報道。 あらかじめ戸数や総工費を決めてからコストをたたいて発注するデベロッパーに責任はないのか?建築主側から問題の建築士を使うように指示があった場合もあるというのに。
結局スポンサーになっている、建築主・売主側の大手デベロッパーやゼネコンの顔色を見ているんでしょうかね。