三浦展 『下流社会』 光文社新書 780円
「何か違う」「結局何を強調したいのか。」『ファスト風土』の著者で、しかもベストセラーランキングに入っているということで、チェックしたのですが、はっきりいって「がっかり」です。
この調査立論自体が、あくまでも「意識」として「上流」「中流」「下流」と回答した「意識」の問題であって、下流と意識している人が本当に下流なのかという点は、本来『ファスト風土』で指摘してきたものであった筈なのに・・・。そもそも、経済・雇用形態や、社会保障からの側面は排除している点や統計の使い方も『反社会学講座』の槍玉に上がりそうです。みんな、「?」ばかり。まあ著者もあとがきで「統計学的有意性に乏しいことは認めざるを得ない」としていますがね。
提言というのも申し訳程度で、結局、若者しっかりしろ、社会は若者の意欲向上させろ。教育、多様性といいつつ、階層固定になるとデメリットが生じるから『ドラゴン桜』だという感じで支離滅裂な感じです。
要するに、本書は「新たな階層集団の出現」というサブタイトルが端的に示すように、中流の中で「下流」とカテゴライズされる集団が形成されており、その消費的・生活文化的特性を上中流との比較から、私観を述べつつ、下流に売れるものを作るための指針というような、これからのマーケットとしての「下流」を提起した。マーケティング素材だけの価値と言えましょう。タイトルが正確じゃありませんね。『中の下社会』という題名が正しいという感じです。